今回は、情報モラル教育の骨組み(理念)を確認した上で、具体的な授業のケースを見ていきましょう。情報モラル教育で何をしているのか、どうすればそのようなモラルが身につけられるのかのヒントになるはずです。
情報モラル教育の5つの要素とその関係
情報モラル教育で重要なのは、①「情報社会の倫理」②「法の理解と遵守」③「安全への知恵」④「情報セキュリティ」⑤「公共的なネットワーク社会の構築」の5つの要素です。
前回の情報モラル教育が持つ2つの側面(判断や態度の獲得と安全性)から説明すると、情報社会に対する「適切な判断やそれに基づく態度」は、①と②にあたります。①と②は、例えば、「他人の情報を尊重する」態度や判断を学ぶのであり、「他人に親切にする」「友人と良好な関係を築く」といった日常生活のモラルと関係しています。
「リスク回避とセキュリティの知識や技術」は③と④に該当します。不適切な情報に対する対処や安全や健康を害するような情報を自分でコントロールできるようになるための知識や具体的な対処方法を学びます。
そしてその2つの側面を身につけた上で初めて⑤の「社会の構築」に参画できるという教育モデルになっています。
情報モラル教育の実践例
1)国語 3年生「相手にわかりやすく伝えよう 出来事を伝える活動を通して」
学習内容:自分が体験した出来事を相手に伝える
学習時の目標:
・聞き手(読み手)に出来事をわかりやすく伝えるために必要な「いつ」「どこで」「だれが」「どうした」が話の内容に含まれて説明されている。
・生徒が他のクラスメイトの話(文章)を聞いた(読んだ)時にわかりやすく伝えるための工夫や、気持ちを理解できる。
情報モラル教育の目標:
・相手に対する自分の影響を考える
・情報のやりとりや伝える際のルールやマナーを知って、守る
2)総合的な学習の時間 5〜6年生「その情報、本当に正しいインターネットを賢く安全に使うために情報の信頼性と安全性」
学習内容:インターネットを使った時の体験のディスカッション、インターネットと教科書のデータの比較、実際のWebページの分析を行う
学習時の目標:
情報の信頼性を測れることや、メディアによって情報に違いがあることがわかることなどを踏まえて、自分の目的に応じた情報を手に入れられるようにする
情報モラル教育の目標:
・危険な内容を避けたり、適切ではない内容の判断ができ、情報の適切さを判断する基準を身につける
解説
1)は、情報モラル教育の要素の①と②に該当する授業であり、2)は、要素の③と④の授業内容であることがわかります。
情報モラル教育はこのような要素のもと、体系的に取り組んでいっていることが理解できたのではないでしょうか。
情報モラルは今や必須のスキル?!
ほんのさわり程度でしたが、子どもたちに情報モラルを身につけてもらうための教育の実践を知ることができたのではないでしょうか。
情報に対するモラルは、大学では「情報リテラシー」などの名前で、今や学生が学ぶべき必修の講義となっている学校も少なくありません。小学生が学ぶことと思わずに、取り入れられるところから、あなたの生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
参考文献
日本教育工学振興会2007「すべての先生のための『情報モラル』指導実践キックオフガイド」

この記事を書いた人
父、母、弟、妹、叔母、祖父、曾祖父、妻…、と家族・親族に教員がたくさんいて、自分自身も公立学校の教員免許を所持しているちょっと変わった経歴を持っているエンジニアです。三重県四日市市を拠点に、自分たちの子供の世代のためにできること、すなわち「教育」を起点に何かしら社会のプラスになることにチャレンジしていきたいと考えています。また、Thinker!の開発や情報発信も担当しています。