問題解決能力の育成としてのICT活用
以前、小学校課程にICT教育を取り入れ、子どもたちの問題解決能力を育てることがICT教育の目的である主体的・創造的な子どもを育成するために必要だと紹介しました(「ICT教育を支える問題解決思考」)。問題解決能力とは、その名の通り、問題を発見して解決するための力ですが、そのような力を身につけるのにICTを使う機会を増やしていくことが効果的です。
今回はICT教育を促進していく上で、同時に行っていく必要がある情報モラル教育がなぜ必要なのかと、その教育を通したねらいを紹介していきたいと思います。
ICT教育に情報モラル教育は必要不可欠
問題解決能力の育成には、子どもたちがICTを使う機会を増やすことが良いと言いました。しかし、その反面で不安もあるのではないでしょうか。例えば、子どもたちがICTに接する機会が増えるというのは、ネットでのいじめや詐欺などの架空請求、顔写真や個人情報の無断公開や送信といったトラブルに巻き込まれたり、また子どもの自身が知らぬ間に引き起こしてしまう可能性があると考えるかもしれません。どのような場合にせよ、そのような事態にならないためには、ICTを通して手に入れた情報をどう取り扱うのか、どの情報を信じるのかといった判断力を、最初に身につけておくことが必要です。このような情報との付き合い方に対する教育(「情報モラル等指導サポート事業」)は、2005年度から行われてきましたが、昨今においても事件やトラブルに対する相談が多発、増加している事態を取っても十分に教育が行き渡っているとは言い難いでしょう。
今ここでもう一度情報モラル教育を見直しておく意味はありそうです。
情報モラル教育の見直し
情報モラル教育とは、情報社会を生きて行く上で「的確な判断能力を養う礎になる教育」と定義されています。その教育を通し、情報による危険を回避するための「情報の科学的な理解」「情報活用の実践力」を身につけ、その上で子どもたちに「情報社会に参画する態度」を養って貰おうというねらいがあります。すなわち、情報モラル教育には、この情報社会で生きるための適切な判断やそれに基づく態度と、安全に生活するためのリスク回避とセキュリティについての知識や技術を身につけるといった2つの側面があるのがわかります。
情報モラルは、子どもたちにも、私たちにも
携帯やインターネットを使っていないと上手な人付き合いすら難しくなりつつあるような情報社会を生きる子どもたちや私たち。そのどちらに とっても、情報を選別したり活用したりするこの知識や技術が必要そうだと思ってもらえたら幸いです。
次回は、情報モラル教育の骨組み(理念)を紹介した上で、その考えを元にした具体的な授業のケースを紹介していくことで、情報モラル教育に対する理解を深めていきたいと思います。
参考文献
日本教育工学振興会2007「すべての先生のための『情報モラル』指導実践キックオフガイド」

この記事を書いた人
父、母、弟、妹、叔母、祖父、曾祖父、妻…、と家族・親族に教員がたくさんいて、自分自身も公立学校の教員免許を所持しているちょっと変わった経歴を持っているエンジニアです。三重県四日市市を拠点に、自分たちの子供の世代のためにできること、すなわち「教育」を起点に何かしら社会のプラスになることにチャレンジしていきたいと考えています。また、Thinker!の開発や情報発信も担当しています。